日本の魅力を考えよう

ゲストハウスなどで日本にきている外国人と話すと、「もしかして自分よりも日本に詳しい」と感じた経験はありませんか。

もしくは日本の魅力を聞かれたときに、思い浮かばずしどろもどろになってしまったこととか。

 

・・・私はあります。

 

バイバイした後に「もう少し魅力を伝えられたら、あの人たちの旅はもっと楽しくなったかな」なんてことを考えて、悔しさと申し訳なさを感じました。

 

どうせ同じ時間を過ごすのであれば、お互いが相手に有益な情報を与え合いあえるようになりたいですよね。

ということで「日本の魅力を伝えられるようになる」べく、まずは考えることから始めたいと思います。

日本の魅力というと何が思い浮かぶ?

あなたは「日本の魅力は?」と聞かれて、まず何を思い浮かべるでしょうか。

 

和食?着物?アニメ?
それとも「魅力なんてあるの?」と思われますか?

 

日本に住む日本人自らが魅力と感じるものを考えるのも一つですが、専門家や訪日外国人がどう見ているのかという視点も重要です。

 

まずは専門家がどう見ているかについて、「デービット・アトキンス」氏の「新・観光立国論」から学んでいきます。

日本は資源を活かしきれていない?

近年のニュースでは訪日外国人が年々増えていると報じられ、東京をはじめとして京都や大阪、福岡などに行けば外国人が増えているという実感があるでしょう。

 

特に京都はアメリカの大手旅行雑誌「トラベル+レジャー」で、読者投票の「人気観光都市ランキング」にて世界1位に輝いていることもあります。

 

情報的にも感覚的にも、「日本の観光は世界の中でもトップ層なのか」と思ってしまうのではないでしょうか。

 

・・・私はそうでした。

 

しかし「新・観光立国論」を読み、根拠に基づいて考えるべきだったと反省をしました。

 

「新・観光立国論」では観光大国かどうかを、「国際観光客到着数ランキング」と「国際観光収入ランキング」の視点からも示しています。

国際観光客到着数ランキング(2013年)

順位 国名 観光客数(万人) 人口(万人) 人口あたり観光客数(%)
1 フランス 8,473 6,611 128.2
2 アメリカ 6,977 32,070 21.8
3 スペイン 6,066 4,646 130.6
4 中国 5,569 136,930 4.1
5 イタリア 4,770 6,079 78.5
26 日本 1,036 12,691 8.2
合計 74,821 284,044 26.3

(「新・観光立国論」より一部抜粋)

国際観光収入ランキング(2013年)

順位 国名 収入(100万ドル) 観光客数(万人) 観光客あたり収入(ドル)
1 アメリカ 214,772 6,977 3,078
2 スペイン 67,608 6,066 1,115
3 フランス 66,064 8,473 780
4 中国 56,401 5,569 1,013
5 マカオ 52,326 1,427 3,667
21 日本 16,865 1,036 1,627
合計 908,024 62,143 1,461

(「新・観光立国論」より一部抜粋)

 

2013年と古い数字ではあるものの、上記の表から見ると日本は「国際観光客到着数」では26位、「国際観光収入」は21位となっています。

 

GDPでは世界第3位の経済大国である日本が、観光では人数・収入どちらでも20位以下というのは驚きです。

 

表の中にはありませんが、同じアジア勢では中国だけでなくインドやタイ、マレーシアの方が日本よりも上位になっています。

 

「和食」や「伝統芸能」、最近では「漫画」や「アニメ」など、日本には多くの魅力がありつつも、実際のところ、トップ10にも入らないのは不思議に思いませんか。

 

デービット・アトキンス氏は原因として、単純に「力を入れてこなかった」ことに加えて、観光業への理解や知識の不足による勘違いなどを挙げています。

観光大国になりうる条件をもつ日本

「観光客数」や「観光収入」で上位でないのは、ヨーロッパやアメリカ、他のアジア勢に比べて、日本の魅力が足りていないというわけではありません。

 

実際に日本は「観光客数(2013年)」「観光収入(2013年)」のどちらも20位以下であるものの、世界経済フォーラムが発表する「観光潜在力ランキング」では2015年が9位、2017年・2019年は4位という結果です。

 

デービット・アトキンス氏は「新・観光立国論」の中で、「観光大国」と評価される国が満たす条件を「気候」「自然」「文化」「食事」の4つとしています。

 

実は「観光大国の4条件」を満たす国というのは少なく、イギリスでは「気候」や「食事」が欠けていたり、アメリカでは「食事」が欠けているのです。

 

また4条件を全て満たしている中国では、大都市の空気汚染など自然環境破壊を理由に外国人観光客が及び腰になっているということもあります。

 

「観光大国の4条件」という点においては、日本は全て満たしているいっていいでしょう。

 

暑い季節と寒い季節をあり地域には自然が残っていて、伝統芸能などの多くの文化が存在し、「和食」といった食文化も世界で脚光を浴びています。

あらためて日本の魅力を再認識するとともに、どのように発信していくのかということを一国民として考えていきたいですね。

訪日外国人が求めるものと政策

日本を訪れる理由を知ることで自国の魅力に気づけて、相手にも役立つ情報を伝えられますよね。

 

また日本では自国の魅力をどう捉えていて、どのような政策をとっているのかを把握すると大局的にみられるかもしれません。

 

日本を訪れる人は何を求めているのか

日本の観光情報をとりまとめる観光庁が発表した「訪日外国人の消費動向(2018年年次報告書)」では、「訪日外国人の旅行支出」や「土産品の購入実態」、「満足度と再訪意向」などの調査結果が書かれています。

 

日本を訪れる理由については、「訪日前に最も期待してたこと」から読み取っていきましょう。

 

訪日前に期待していたこと(複数回答)

  1. 日本食を食べること(70.5%)
  2. ショッピング(54.5%)
  3. 自然・景勝地観光(46.5%)
  4. 繁華街の街歩き(41.7%)
  5. 温泉入浴(28.1%)
  6. 日本の酒を飲むこと(24.7%)
  7. 日本の歴史・伝統文化体験(20.6%)
  8. 美術館・博物館(20.1%)
  9. 旅館に宿泊(19.2%)
  10. 日本の日常生活体験(16.9%)

 

10位以下には「テーマパーク」や「スキー・スノーボード」「映画・アニメ縁の地を訪問」や「日本のポップカルチャー」などがあります。

 

訪日前に最も期待していたこと(単一回答)

  1. 日本食を食べること(27.9%)
  2. 自然・景勝地観光(14.0%)
  3. ショッピング(12.5%)
  4. 温泉入浴(7.8%)
  5. テーマパーク(6.4%)
  6. 日本の歴史・伝統文化体験(4.6%)
  7. 四季の体感(3.7%)
  8. 美術館・博物館(3.5%)
  9. 日本の日常生活体験、繁華街の街歩き(3.3%)
  10. スキー・スノーボード(2.1%)

 

10位以下には「日本の酒を飲むこと」「旅館に宿泊」「舞台鑑賞」「自然体験ツアー・農漁村体験」「日本のポップカルチャーを楽しむ」などがあります。

 

複数回答・単一回答ともに「日本食を食べること」が1位であり、多くの訪日外国人は目的は「和食」であるといれるでしょう。

 

しかし続く第2位は複数回答では「ショッピング」である一方で、単一回答だと「自然・景勝地観光」というのは面白いです。

 

複数回答で多い「ショッピング」や「繁華街の街歩き」は一番の理由ではなく、「和食」や「自然・景勝地観光」をメインできている人が多いということがわかります。

訪日外国人の60%以上がアジア地域(中国・観光・台湾・香港)で、米国やヨーロッパ、オーストラリアの地域の人たちが求めるのは少し違う理由かもしれません。

「訪日外国人の消費動向(2018年)はこちらから

国をあげて取り組む「クールジャパン戦略」

「クールジャパン戦略」とは、世界から「クール(かっこいい)」とみられる日本の魅力を発信し、「共感の獲得」と「日本ファン増加」を狙いとしたものです。

 

知的財産戦略本部が発表している資料には、クールジャパンについて以下のように書かれています。

 

クールジャパン(CJ)とは、世界から「クール(かっこいい)」と捉えられる(その可能性のあるものを含む)日本の「魅力」である。CJは「食」、「アニメ」、「ポップカルチャー」、「新幹線」、「伝統工芸」、「有名観光地」など日本人が典型的に思い浮かべる魅力に限られるものではない。「渋谷のスクランブル交差点」、「弁当箱」、「部活」、「路地裏の風景」まで、日本人がクールと捉えないものであっても、世界の人々からクールと捉えられるものはCJである。(内閣府HPより)

 

・・・地元にある銭湯の廃墟とかも含まれるかな?

 

クールジャパン政策は内閣府が中心になって取り組んでいて、総務省や外務省、財務省(国税庁)、文化省(文化庁)、農水省、経産省、国交省(官公庁)などの各省庁も関与しています。

「クールジャパン戦略」はこちらから

 

「クールジャパン関連予算(平成31年度政府概算要求)」の資料では予算合計は580億円、予算がついているのは「文化財を活かした観光戦略推進プラン」や「農泊推進対策」、「放送コンテンツ海外強化事業」などです。

「クールジャパン関連予算(平成31年度政府概算要求)」はこちらから

 

まだまだ観光での潜在能力を秘める日本なので、国の方針を知りつつ個人単位で動けていけたら面白いですね。

 

街を歩いててこんなマークを見かけたら、それはクールジャパン戦略の取り組みの一部です!

出典:内閣府

 

以下の記事で伝統工芸品である陶磁器・漆器について書いていますので、日本の魅力をさらに知りたい方はぜひご覧ください。

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おわりに

自分の魅力を探すのって、案外むずかしいものですよね。
今回の記事では「専門家」や「訪日外国人」からの視点を踏まえ、今の日本の方針をご紹介しました。

客観的な意見を踏まえて今の自分を取り囲むものを見直してみると、新たな発見につながるかもしれません。