お料理屋さんで何気なく出てくる日本酒は、「米」と「米麹」、「水」だけで造るシンプルな飲み物。
しかし原料や製造方法などによって種類はたくさんあり、知れば知るほど奥が深い世界なのです。
この記事では日本酒をもっと美味しく飲むために、「原料」や「ラベルの見方」、「製造工程」などを簡単にご紹介します。
「社会人の教養として」
「個人の楽しみとして」
日本酒の基礎知識を知ることによって、今よりもっと飲むのを楽しい時間にしましょう。
Contents
世界から注目される「日本酒」
世界にはワインやビール、スコッチなど有名なお酒がたくさんある中で、最近は日本酒もその頭角を現してきました。
まだまだ伸びしろがあり、業界という視点で見ても面白いものなのです。
「SAKE」を楽しむ外国人が増えている
海外で日本酒は「SAKE」と呼ばれ、21世紀に入ってから欧米やアジア圏で飲まれるようになりました。
2007年からイギリスでは、国際ワインコンテストに「日本酒部門」が設けられるほどです。
日本酒の輸出量も増加傾向にあります。
日本酒の輸出総額
2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | |
金額(百万円) | 11,507 | 14,011 | 15,581 | 28,679 | 22,232 |
数量(kL) | 16,314 | 18,180 | 19,737 | 23,482 | 25,746 |
(「財務省貿易統計」より)
国別でみると金額・数量ともに第1位はアメリカで、次に韓国・中国・台湾・香港のアジア諸国がランクインです。
輸出量に加えて、日本酒を飲むために日本へ来る人もいます。
日本酒の人気が拡大しているのをみると嬉しい限りなのですが、輸出量だとフランスのワイン輸出量やイギリスのスコッチ輸出量には負けてしまうのが実情・・・
- 日本の日本酒輸出量(2018):222億円
- フランスのワイン輸出量(2016):1兆181億円
- イギリスのスコッチ輸出量(2017):6,500億円
もっと日本酒の魅力を知ってもらって、日本を盛り上げていきたいですね!
ひとくくりに「日本酒」といっても色んなものがある
原材料は「米」と「米麹」、「水」だけであるものの、日本酒は一つ一つで味わいが違います。
「シンプルだけど複雑」というのが、日本酒の魅力の一つといえるでしょう。
そもそも日本酒って何から造られるの?
日本酒は主に「米」「米麹」「水」で造られ、原材料の品質や製造工程などで味に違いが出てきます。
シンプルに「米」「米麹」「水」だけで造られたお酒を「純米」と呼びます。
「純米」のほかに「醸造アルコール」を含んだ日本酒もあり、大吟醸酒や吟醸酒などがそうです。
純米 | 純米大吟醸酒、純米吟醸酒、純米酒 |
---|---|
醸造アルコール | 大吟醸酒、吟醸酒、本醸造酒、普通酒 |
「醸造アルコール」は「品質を安定させやすい」「味をスッキリさせる」といった理由で使われています。
地域ごとの特徴を味わいたいのであれば、やはり水と米しか使わない「純米」を選ぶのがいいでしょう。
まずはラベルから特徴を知ろう
たくさんの日本酒の中から自分の好きなものを見つけるのは、なかなか難しいですよね。
いくつかの分類を見ながら選んでいくと、好みのお酒に出会える可能性が高まります。
では何を確認するかというと、ずばり「ラベル」です。
ラベルに書かれている情報
銘柄名 | 書体や色からこだわりが見える |
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製造者名 | 氏名や酒蔵名、所在地 |
特定名称区分 | 基準を満たした場合に表示 |
容量 | 四合瓶は720mL、一升瓶は1.8L |
原材料名 | 使用量の多い順に記載 |
原料米 | 使用割合が50%超の場合に表示 |
精米歩合 | 特定名称を表示する場合に表示 |
アルコール分 | 清酒はアルコール度数20度未満 |
酒造年度、製造年月 | 日本酒が製造された時期 |
日本酒度、酸度 | 辛い・甘い、香りあり・なしなど味の目安 |
ラベルには「法令で義務付けられた表示」と、「酒蔵が伝えたいこと」が書かれています。
酒蔵の中には「水の硬度」や「発酵日数」を表示したり、日本語だけでなく英語やフランス語で書かれていたりも。
たくさん書かれていて混乱するようなら、まずは「特定名称区分」から確認してどのようなお酒なのかを把握するといいでしょう。
飲み方を変えれば更にお酒が楽しめる
日本酒は世界でも珍しい「飲む温度が幅広い」お酒で、キリっと冷たい冷酒からほっこり温かい燗酒(かんざけ)まで楽しむことができます。
冷やすと香りと味がキリッと引き締まり、温めると甘みが増して苦みや渋みがなくなるという奥深さ。
日本酒の主な飲み方
- 燗酒(かんざけ):温めたお酒(40~60℃)
- 冷や酒(ひやざけ):常温・室温のお酒(20~35℃)
- 冷酒(れいしゅ):冷蔵庫で冷やしたお酒(5~15℃)
お鍋や煮物など温かいお料理には温かいお酒を、お刺身など冷たいお料理には冷たいお酒が合います。
最近では爽やかさを味わう「スパークリング日本酒」や、凍ったまま食べる「コオリ酒」など色んな飲み方がありますので、ぜひ試しに飲んでみましょう。
「日本酒」を造る過程を知って楽しみ方を増やす
「日本酒」は8ステップで造られる
出来上がったものだけでなく造る過程も知っておくと、お酒がより一層楽しく飲めるかもしれません。
日本酒は、簡単にすると8つ工程から造られます。
- 精米:酒米は時間をかけて丁寧に精米され、精米歩合によって時間は異なる
- 洗米:精米したあとの米についている糠(ぬか)や米くずを洗い流す
- 蒸し米:蒸すことで麹の酵素が糖化作用を受けやすくなる
- 麹造り(こうじづくり):温度を一定に保った暖かい麹室で丁寧に手作業でされる
- 酒母造り(しゅぼづくり):米麹と蒸し米と仕込み水、1対4対6くらいの割合でタンクにいれて混ぜ合わせる
- 三段仕込み・もろみ造り:米麹と蒸し米と仕込み水を増やし、酒母を倍々にしていく
- 上槽(じょうそう):どろどろの状態のもろみを濾過する
- 火入れ:絶妙な低温度帯で殺菌し、酒を変質させることなく酵母の働きを抑え発酵を止める
こちらの動画で「日本酒の製造工程」について説明していますので、もっと知りたい方はご覧ください。
おちょこを口に運べば、お酒の味わいとともに酒蔵の人たちの働く姿が浮かぶ・・・
そんなお酒の飲み方ができたらいいですね。
酒蔵見学できる全国のお店を紹介!
「ラベルの見方」や「製造工程」などがざくっと分かったら、酒蔵に行って直接見聞きすることをおすすめします。
全国には約1500の酒蔵があり、作り方はどこも独自のスタイルです。
見学可能な酒蔵(一部)
東北地方 | 八戸酒造(青森県八戸市)、南部美人(岩手県二戸市)、浅舞酒造(秋田県横手市)、一ノ蔵(宮城県大崎市)、米鶴酒造(山形県東置賜郡)、喜多の華酒造(福島県喜多方市) |
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関東地方 | 明利酒類(茨城県水戸市)、宇都宮酒造(栃木県宇都宮市)、永井酒造(群馬県利根郡)、麻原酒造(埼玉県入間郡)、鍋店(千葉県香取郡)、小澤酒造(東京都青梅市)、泉橋酒造(神奈川県海老名市) |
中部地方 | 尾畑酒造(新潟県佐渡市)、山梨銘醸(山梨県北杜市)、福光屋(石川県金沢市)、富士錦酒造(静岡県富士宮市)、関谷醸造(愛知県豊田市)、伊藤酒造(三重県四日市市)、渡辺酒造店(岐阜県飛騨市) |
関西地方 | 北島酒造(滋賀県湖南市)、藤岡酒造(京都府京都市)、長籠酒造(奈良県北葛城郡)、神戸酒心館(兵庫県神戸市) |
中国地方 | 千代むすび酒造(鳥取県境港市)、藤井酒造(広島県竹原市)、旭酒造(山口県岩国市) |
四国地方 | 本家松浦酒造場(徳島県鳴門市)、司牡丹酒造(高知県高岡郡) |
九州地方 | 若波酒造(福岡県大川市)、天吹酒造(佐賀県三養基郡)、瑞鷹(熊本県熊本市)、中野酒造(大分県杵築市) |
調べてて気付いたんですけど、佐賀県って結構酒蔵が多いんですよ(驚)。
観光地として若い女性や外国人観光客に賑わう酒蔵から、おみやげや食事の品揃えが豊富な蔵まで様々です。
個人的には酒ケーキが好きで、壱岐島や佐渡ヶ島で食べた味が忘れられません。
タイミングが合えばしぼりたてのお酒が飲めたり、地域限定酒に出会えたり、併設している食事処やカフェで楽しんだりもできちゃいます。
おわりに
日本酒一つとっても銘柄がたくさんあり、基礎知識を知っていればお料理屋さんや旅先での楽しみが増えそうですよね。
さらに「飲む温度」や「どんな器で飲むか」、「おつまみ」などまで考えたら、日本酒だけでどれだけ世界が広がるのだろうと思ってしまいます。
この基礎知識をもって足を運び、自分の舌で確かめながら、楽しみ方というのを深めていけたらといいなあ。
さらに日本酒のことが知りたい方は、以下の記事もご参照ください!