「海外へ行くのに安全面で何を調べたらいいのかな」
「日本と海外って治安はどう違うの?」
たしかに海外で日本人が巻き込まれる事件や事故は多いのですが、事前に情報収集をして危機意識を持っていれば防げるものもあるのです。
この記事では出発前に必要な「心構え」や「意識すること」、「治安情報の調べ方」などをご紹介します。
Contents
海外を旅するには十分な注意が必要
行ったことのない場所の状況をイメージするのは難しいことですが、一つ一つ情報を集めながら知っていくのが大切です。
まず「世界平和度指数」という大きな視点と、「海外でのトラブル事例」という小さな視点から掴んでいきます。
断片的な情報だとしてもつなぎ合わせて、前もって何に気を付けるべきかを自分で考えましょう。
日本と海外とでは事情が違う
世界の国々に比べると私たちの住む日本は、どこに行くにもある程度の安全は確保されています。
治安の良し悪しを表す一つの指標として世界平和度指数があり、日本は世界第6位という結果からもいえるでしょう。
世界平和度指数とは、イギリスのエコノミスト紙が24項目から144ヵ国を対象に分析し、各国や地域がどれくらい平和かを相対的に数値化したものです。
世界平和度指数の項目と情報源
- 対外戦・内戦の数:UCDP(ウプサラ紛争データプログラム)
- 対外戦による推定死者数:UCDP
- 内戦による推定死者数:UCDP
- 本格的な内戦の程度:EIU(エコノミスト・インテリジェンス・ユニット)
- 近隣国との関係:EIU
- 他の市民に対する不信感の程度:EIU
- 人口に対する難民・追放者の割合:World Bank
- 政治的不安定さ:EIU
- 人権尊重のレベル(政治テロの程度):Amnesty International
- テロ活動の潜在的可能性:EIU
- 殺人事件の数:UNSCT
- 暴力犯罪の程度:EIU
- 暴動の可能性:EIU
- 犯罪収容者の数:ICPS(ロンドン大学キングス・カレッジ・ロンドン刑務所研究所調査)
- 警察・治安維持部隊の数:UNSCT(国連犯罪・裁判状況調査)
- GDPに対する軍事費の比率:IISS(国際戦略研究所)
- 軍人の数:IISS
- 普通一般兵器の輸入量:SIPRI(ストックホルム国際平和研究所兵力輸送データベース)
- 普通一般兵器の輸出量:SIPRI
- 国連の介入度:IISS
- 国連以外の介入度:IISS
- 重兵器の数:BICC(ボン国際転換センター)
- 小型武器、携帯兵器の入手しやすさ:EIU
- 軍事力・精錬度:EIU
2019年度は、1位アイスランド、2位ニュージーランド、3位ポルトガル、4位オーストリア、5位デンマークという結果でした(日本は9位)。
他の国では日々の犯罪に加え、内戦やテロといった生死に関わる出来事も起きていて、日本を旅行する感覚でいると危ないです。
出発前に日本と海外では事情が違うことを頭に入れて、「自分の身は自分で守る」という心構えで臨まなければなりません。
海外で発生したトラブル事例
「海外邦人援護統計」によると、日本人が被害を受けた犯罪で多いのが「強盗」「窃盗」「詐欺」などの財産犯罪による被害で、被害件数の約9割を占めています。
海外邦人援護統計(2018年度)
件名 | 件数 | 人数 | 内死亡 | 内負傷 | 内ほか |
殺人 | 8 | 9 | 6 | 2 | 1 |
傷害・暴行 | 98 | 114 | 0 | 62 | 52 |
強姦・強制猥褻 | 36 | 34 | 0 | 8 | 26 |
脅迫・恐喝 | 53 | 52 | 0 | 1 | 51 |
強盗・強奪 | 207 | 215 | 3 | 65 | 147 |
窃盗 | 3,968 | 3,549 | 0 | 6 | 3,543 |
詐欺 | 313 | 279 | 0 | 1 | 278 |
誘拐 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
テロ | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
その他 | 85 | 69 | 0 | 1 | 68 |
犯罪被害とは別に事件・事故・災害以外で「所在調査」の件数が多いことも注目です。
トラブル事例を挙げていくと、いかに多くの危険が潜んでいることがわかるでしょう。
海外での主なトラブル事例
- スリ:エスカレーターの降り口で、前に立っている人がつまずいたので自分も立ち止まると、すぐ後ろにいた人とぶつかって財布がすられていた。
- 強盗:ホテルのチェックイン後すぐにドアをノックされ、何気なくドアを開けたら強引に部屋に押し入られ金品を強奪された。
- 強盗:市街地で知り合った自称旅行者と親しくなり、一緒に観光した後に公園でビールとクッキーを食べたところ意識を失った。朦朧(もうろう)とした状態で歩いているところを保護され、パスポートや現金、航空券、時計など身の回りの貴重品全てを盗まれた。
- 強盗:夜間、出発までに時間があるので駅周辺を散歩していたところ、暗がりに引きずり込まれて暴力をふるわれた挙句カバンを強奪された。
日本では夜間に女性一人が出歩いていても、たいていの場合は安全に過ごすことができますよね。
上記の海外事例をみると、いかに日本と違うことがよくわかります。
まずは心構えから整えていく
海外のトラブル事例を挙げだしたらキリがなく、一つ一つに対策を立てていくのは難しいです。
まずは心構えをしっかりと整えることによって、危険に対するアンテナを張り巡らせるようにしましょう。
自分の身を守る心構え
- 危険な場所には絶対近づかない
- 多額の現金・高価な貴重品は持ち歩かない
- 信用のおけるお店で買物をする
- 見知らぬ人を簡単に信用しない
- ホテルの中でも安心しない
- 犯罪に出くわしたら抵抗しない
あわせてテロに対する心構えも、持つようにしてください。
テロの心構え
- 中東・アフリカ地域以外でもテロはある
- テロの標的は、「ソフトターゲット」
- 「ホームグロウン型」・「ローンウルフ型」の犯行増加
- 日本人もテロの標的になりうる
用語確認
- ソフトターゲット:軍事・テロ攻撃に守られていない人・物のこと
- ホームグロウン型:国外の過激思想により、国内出身者が独自に引き起こすテロ
- ローンウルフ型:大規模なテログループに属さない単独・少数のテロ
ニュースをみれば日本でも犯罪はあふれていますが、海外では価値観やルールなど前提条件からして違うのです。
危険に対して敏感になり、情報収集や状況判断を的確にしていきましょう。
情報収集をして万全の準備を
最低限調べておくべき情報
渡航先の情報を事前に調べておくことで、未然に事件・事故の被害を防ぐことができます。
少なくとも以下の6つは、出発前に必ず調べておきましょう。
渡航先の治安情勢 | 外務省や日本国大使館、総領事館のホームページより確認 |
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犯罪手口や防犯対策 | 外務省ホームページ、トラブル事例より確認 |
渡航先の感染症、医学・健康情報 | 外務省ホームページより確認、予防対策の徹底 |
出入国時注意事項 | ビザとパスポートの残存有効期間や為替管理、持込制限などに注意 |
入国後の注意事項 | 旅行制限や滞在記録など |
風俗・習慣 | 宗教観や文化の違いなど |
「電子たばこを持ち込み禁止国に携行したら、逮捕され多額の罰金を命じられた」
「現地の子どもが可愛いので頭をなでたら親に厳しく怒られた」
犯罪以外にも海外でのトラブルは沢山あり、事前に調べておけば防げ事例も多いです。
「自分は大丈夫」と思わずに、少し手間でも情報収集をしましょう。
情報収集先と調べ方
海外渡航のための情報収集は、主に5つからすることとなります。
主な情報収集先
- 日本大使館・総領事館のホームページ
- 外務省のホームページ・サービス
- 日本にある各国・地域の政府観光局
- 旅行会社
- 現地に滞在している友人・知人
- その他(テレビ番組・ラジオ番組・書籍など)
特に外務省では「安全に海外渡航・滞在するために必要な情報」の提供をしていて、ホームページや会員サービス、スマートフォンアプリがあるので必ずチェックしておきましょう。
外務省海外安全ホームページで確認できること
- 危険・スポット・広域情報
- 安全対策基礎データ
- テロ・誘拐情報
- 安全の手引き
- 医療事情
- 緊急時の連絡先
最近では「イラク・イラクの危険情報」が掲載されていて、ただ見るだけでも世界の情勢を確認することができます。
海外でトラブルに巻き込まれたときの対応について解説している記事もあるので合わせてご覧ください。
何より大切なのは「無事に帰ってくること」
「自分の力を試したい」「新しいものに出会い見識を広げたい」など、海外を旅する理由は人それぞれでしょう。
しかし誰しもが必ず心がけなければならないことは、「無事に帰ってくる」ということです。
好奇心から知らない人に着いて行きたくなるかもしれません。
どうしても見たい景色があって無理をしてしまうこともあるでしょう。
しかしそのような少しの油断が、「かけがえのない自分の人生」を終わらせてしまうかもしれないのです。
おわりに
何も海外に限ったことではありませんが、不慣れな土地だと危険度も増すので「自分の命優先」で物事に当たらなければなりません。
とはいえ膨大な情報から取捨選択をするのは難しいですし、時間もかかりますよね。
初めから「何とかなるだろう!」と楽観視せず、最低限みておかなければならない情報には目を通し、しかるべき対策を取った上で海外に行きましょう。
何にも代えられない、あなたの大切な命なのですから。