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【北陸・関西・中国編】もっと日本の陶器を知ろう!信楽焼や備前焼、萩焼など

「東北・関東・中部編」に引き続き、この記事では「北陸・関西・中国」地域における「陶器」の特徴について書いています。

 

北陸や関西には早い時期から陶器を作り始めていた地域が多く、隆盛や衰退を経て今でも器を世に出していると思うと感慨深いですね。

 

もし旅行で訪れる機会があったときに、少しでも思い出して興味の対象となればいいなと思います。

 

なお本記事を書くにあたり参考にしたのは、「経済産業省HP(日用品・伝統的工芸品)」「伝統工芸 青山スクエア」「わかりやすい、くわしい やきもの入門/仁木正格」です。

【北陸・関西・中国】各地域の陶器 特徴早見表

各地域における陶器の大まかな特徴は以下のとおりです。

 

地域 はじまり 特徴 主な製品
越前焼 福井県 平安時代末期~ 焼き締め、灰釉・鉄釉中心 酒器、茶器、日用雑器、かめなど
信楽焼 滋賀県 平安時代末期~ 無釉の焼締陶(やきしめとう) 花器、食器、傘立、置き物、植木鉢、庭園用品
伊賀焼 三重県 奈良時代~ 代表する作品は花入と水指、堅い焼締 茶器、花器、土器、行平、食器
京焼 京都府 平安時代~ 仁清陶(にんせいとう)、乾山陶(けんざんとう) 食器、花器、茶器、香道用品
石見焼 島根県 江戸時代~ 叩き絞め、来待釉 水かめ、すり鉢、炊事用品
備前焼 岡山県 古墳時代~ 無釉の焼締陶、田土 食器、酒器、茶器、花器、置き物
萩焼 山口県 1592年~ 萩の七化け 花器、茶器、食器、装飾用品

 

北陸・関西地方では比較的に早い時期から陶器が伝わってた一方で、中国地方の西部では江戸時代頃か作り始めたのを見ると流行がどこからくるかが見えて面白いですね。

もっと陶器を知ろう

越前焼


出展:えちぜん観光ナビ

越前焼とは

  • 読み方:えちぜんやき
  • 地域:福井県丹生郡越前町
  • はじまり:平安時代末期~
  • 特徴:焼き締め、灰釉・鉄釉中心
  • 主な製品:酒器、茶器、日用雑器、かめなど

 

釉薬を掛けずに焼くと鉄分を多く含んだ土が茶褐色となり、薪の灰が降りかかり溶けることで生まれる黄色がかった自然釉が越前焼の魅力です。

 

六古窯の一つである越前焼は、常滑焼の技術的影響を受けて平安時代末期からはじまったとされ、それまでの須恵器(すえき)から無釉の焼締で壺・甕(かめ)・すり鉢などが焼かれました。

 

今の越前焼の拠点は越前町小曽原にある「越前陶芸村」で、80軒ほどの窯元や県外の若手陶芸家が集まっています。

 

また焼締だけでなく灰釉、鉄釉、呉須(ごす)、刷毛目(はけめ)、象嵌(ぞうがん)などを使った食器や花器、オブジェなども焼かれていて、伝統を守りながらも新しい時代に入っているのです。

 

信楽焼

信楽焼とは

  • 読み方:しがらきやき
  • 地域:滋賀県甲賀市信楽町
  • はじまり:平安時代末期~
  • 特徴:無釉の焼締陶(やきしめとう)
  • 主な製品:花器、食器、傘立、置き物、植木鉢、庭園用品

 

信楽焼の特徴は赤褐色に焼きあがった土肌に、素地土に含まれる長石の粒が溶けて白くポツポツと器の表面にでてくる無釉の焼締陶です。

 

茶人・武野紹鴎(たけのじょうおう)が農具の中に「わびた」風情を感じて茶の道具にしたことをきっかけに、茶陶信楽が信楽から土を取り寄せて京都で作られました。

 

信楽焼の開窯時期は平安時代末期とされ、鎌倉時代に常滑の影響を受けて無釉の焼締陶となり、主に壺・甕・すり鉢の3つを焼いて隆盛した六古窯の一つです。

 

私は前に仕事で、信楽焼の窯元である「滋賀県甲賀市信楽町」によく訪れていて、個人的な見どころは「信楽駅」の「大きなたぬき」です。

 

この「大きなたぬき」、季節で装いが変わるんですよね。

 

ときには、NINJYA。

ときには、JK(おそらく卒業式シーズン)。

 

中でも私のお気に入りは・・・

 

じゃーん!
桜の木に模しているけど、「どうみてもアフロだよ」って言いたくなるたぬき!!!

 

最高だよ、信楽町!
いつまで経っても好きだよ!!!

 

伊賀焼


出展:(一社)伊賀上野観光協会

伊賀焼とは

  • 読み方:いがやき
  • 地域:三重県上野市、伊賀市
  • はじまり:奈良時代~
  • 特徴:代表する作品は花入と水指、堅い焼締
  • 主な製品:茶器、花器、土器、行平、食器

 

三郷山一つ隔てた隣接地で同じ陶土を使っている信楽焼との違いは、伊賀焼の「耳付きの花入・水指」と「堅い焼き締めに生じる窯変」です。

 

花入の口づくりは「つば上の口」「捻り返し」「寄せ口」「朝顔口」「三角口」などがあり、水指には「袋形」「重ね餅形」「瓢形(ひさごがた)」など様々な種類があります。

 

奈良時代から伊賀焼は焼き始められ、同じ陶土を使っていることから信楽焼と区別がしづらかったものの、桃山時代以降に茶陶の世界で「破格の美」を生み出してから独自の発展をしていきました。

 

江戸時代になり「藤堂伊賀」や「遠州伊賀」がつくられた後に少しの間衰退をしましたが、施釉陶の技術がもたらされ土鍋や行平、土瓶などの日用器も焼かれ再興していきます。

 

京焼

京焼とは

  • 読み方:きょうやき
  • 地域:京都府京都市
  • はじまり:平安時代
  • 特徴:仁清陶(にんせいとう)、乾山陶(けんざんとう)
  • 主な製品:食器、花器、茶器、香道用品

 

京焼の陶器における隆盛期をつくり上げたのは「仁清」と「乾山」という2人の陶工で、それぞれの作風が見どころといえます。

 

仁清陶 卓越した轆轤(ろくろ)や細工物の技を操り、雅なデザインによる繊細かつ華麗な色絵世界を創り出している。国宝の色絵藤花図茶壷(いろえふじばなずちゃつぼ)や色絵雉香炉(いろえきじこうろ)が有名な作品。
乾山陶 仁清の薫陶を受けた陶工で、画家である兄・光琳との合作で主に銹絵(さびえ)の額皿類の雅陶を焼いた。

 

 

京焼には粟田口焼をはじめ八坂焼、清水焼、清閑寺焼、音羽焼、修学院焼などがありますが、茶の湯における茶碗の伝統を持つ樂焼とは区別されています。

 

今では伝統を大切にしながらも固執せず、自由で斬新な作風の食器や生活用品など様々なものが作られているのです。

 

石見焼


出展:山陰いいもの探県隊

石見焼とは

  • 読み方:いわみやき
  • 地域:島根県江津市、浜田市ほか
  • はじまり:江戸時代~
  • 特徴:叩き絞め、来待釉(きまちゆう)
  • 主な製品:水かめ、すり鉢、炊事用品

 

石見焼の特徴は叩き締めによる頑丈さと、地元で採れる来待石(きもちいし)を原料にした釉薬を掛けることによって生まれる素朴な茶褐色の色合いです。

 

またアルカリを含む石を使った透明な釉薬を使った製品もあり、完全燃焼した炎で焼くと黄土色、不完全燃焼では青色になります。

 

石見焼の基礎が築かれるようになったのは江戸時代で、他県の陶工から指導してもらい片口や徳利などの小さな製品が焼かれた後、備前から大型陶器を作る技術が伝わりました。

 

高温の焼締に耐えられる陶土を使って、藍染め用大甕や水甕、丸物という徳利、壺などが焼かれ、北前船で全国各地に運ばれていったのです。

 

備前焼

備前焼とは

  • 読み方:びぜんやき
  • 地域:岡山県備前市伊部ほか
  • はじまり:古墳時代~
  • 特徴:無釉の焼締陶、田土
  • 主な製品:食器、酒器、茶器、花器、置き物

 

釉薬を掛けずに焼き締める備前焼は、土が窯の中で炎によって様々に変化するのを楽しむというのが魅力の一つでしょう。

 

なぜ変化が生まれるのかというと原料の「田土(たづち)」に秘密があり、きめが細かく可塑性の高い上質な粘土なのです。

 

また他にも窯の中で器体をどこに置くかによって火の当たり方や灰のかかり方が異なり、唯一無二のやきものが焼き上がるのも見どころの一つといえます。

 

備前焼のルーツは古代の須恵器(すえき)で、伊部地方で勢力のある寺院から支援を受けながら、原土や燃料の赤松にも恵まれて焼いていました。

 

鎌倉時代になってから備前焼が誕生し「壺・甕・すり鉢」の3点セットが作られ、室町では茶道具としても広まり、桃山時代では花入・水指などが焼かれるなどして発展していきます。

 

萩焼

萩焼とは

  • 読み方:はぎやき
  • 地域:山口県萩市、山口市、長門市
  • はじまり:1592年~
  • 特徴:萩の七化け
  • 主な製品:花器、茶器、食器、装飾用品

 

昔から使われる「大道土(だいどうつち)」に「見島土(みしまつち)」を混ぜることで生まれるざんぐりした味わいに、やわらかな白色や細かいひびのある枇杷色(びわいろ)を合わせたのが萩焼の特徴です。

 

また「萩の七化け」という言葉があり、長い間萩焼を使っていくと貫入からお酒やお茶が染み込み、器表の色合いが変化していくことをさします。

 

萩焼は文禄・慶長の役(1592~1593年・1597~1598年)できた朝鮮陶工によって開窯され、1604年に毛利輝元氏が萩に入府したことを機に陶工たちも移住し御用窯を築いたのがはじまりです。

 

江戸時代に生まれた「松本萩」と「深川萩」で発展した後、明治時代で衰退してしまったものの、三輪休雪氏の「休雪白」によって新境地を開き今に至ります。

おわりに

やきものに興味を持つ前は「色んな〇〇焼があるけど、いったい何が違うんだろう」と、旅先で見つける度に素朴な疑問がありました。

 

実際に学んでみると歴史や原料が違って、似ていても発展のきっかけが違って、その違いが特徴になっているのだとわかります。

 

これからは特徴を頭に入れつつも、手に触れて生活に取り入れる中でどんな使い方が一番いいのかというのも考えていきたいですね。

 

にしても、また信楽町に行きたくなってきたなあ。

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HEYPON
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【自己紹介】青森生まれ/実家は養豚場/5人兄弟4番目/自然好き/日本好き 【経歴】高校まで青森▶大学で関東進出(埼玉)▶大阪の会計事務所に就職▶5年半働いて退職▶日本を回る▶次は海外だ! 【意気込み】「旅をしながら生きていきたい」そんな夢を抱きながら日々を生きていきます。