「旅行に行くと〇〇焼という言葉を見かけるけどどんなものなんだろう」
「せっかく日本にいるのだから、もっと魅力を知りたい」
幸いなことに国土や人民の大部分なくなるような出来事もなく、長い歴史を持つ日本で残ってきているものはたくさんあります。
(フラフラと)日本国内を旅する中で色々な話を聴き、その時は感動するけれども何も勉強せず終わっていたなと反省です。
分からないながらも調べ、足を運びながら少しずつわかっていこうと考えていて、この記事がその第一弾となります。
伝統工芸品と器
日々の生活で使われるものの中には、古くから日本で作られ先人の知恵が詰まっているものもあります。
伝統的な技術や原料などで作られる日用品を「伝統的工芸品」といい、国で指定するのは5つの要件に該当するものです。
伝統的工芸品の要件
- 主として日常生活の用に供されるものであること。
- その製造過程の主要部分が手工業的であること。
- 伝統的な技術又は技法により製造されるものであること。
- 伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されること。
- 一定の地域において少なくない数の物がその製造を行い、又は製造に従事しているものであること。
令和元年11月20日時点で伝統的工芸品として指定受けているのは235品目で、中には「織物」「染織品」「木・竹工品」「和紙」「人形・こけし」などがあります。
お皿やお茶碗など食生活を彩る「器」だけでみると、「陶器」「磁器」「漆器」が伝統的工芸品です。
国から指定を受ける陶器・磁器・漆器
陶器(22品目) | 大堀相馬焼(福島)、会津本郷焼(福島)、益子焼(栃木)、笠間焼(茨城)、越前焼(福井)、美濃焼(岐阜)、常滑焼(愛知)、瀬戸焼(愛知)、信楽焼(滋賀)、伊賀焼(三重)、京焼(京都)、石見焼(島根)、備前焼(岡山)、萩焼(山口)、大谷焼(徳島)、小石原焼(福岡)、上野焼(福岡)、唐津焼(佐賀県)、小代焼(熊本)、天草陶磁器(熊本)、薩摩焼(鹿児島)、壺屋焼(沖縄) |
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磁器(11品目) | 瀬戸染付焼(愛知)、九谷焼(石川)、京焼(京都府)、砥部焼(愛媛)、出石焼(兵庫)、小鹿田焼(大分)、有田焼(佐賀)、伊万里焼(佐賀)、三河内焼(長崎)、波佐見焼(長崎)、天草陶磁器(熊本) |
漆器(18品目) | 津軽塗(青森)、川連漆器(秋田)、浄法寺塗(岩手)、会津塗(福島)、鳴子漆器(宮城)、小田原漆器(神奈川)、新潟漆器(新潟)、木曽漆器(長野)、高岡漆器(富山)、輪島塗(石川)、山中漆器(石川)、金沢漆器(石川)、越前漆器(福井)、若狭塗(福井)、京漆器(京都)、紀州漆器(和歌山)、香川漆器(香川)、琉球漆器(沖縄) |
指定を受けている「器」の「伝統的工芸品」だけでも51品目もあり、登録されていないものを合わせたら一体どれくらいあるのだろうと思いますよね。
陶磁器
陶磁器の製造工程や手法
粘土や陶石から形作り焼いたものを「陶磁器(別名:やきもの)」といい、日々の生活でも「お茶碗」や「湯呑み」、「お皿」など様々な用途で使われています。
この陶磁器がどのようにして作られるのかというと、以下の工程によってです。
陶磁器の製造工程
- 土づくり:粘土や陶石を成形できる状態にする
- 成形:粘土や陶石で用途にあった器の形を作る
- 素地加工:生乾きのうちに高台や彫文様(ほりもんよう)をつける
- 乾燥:風や直射日光を避けながら徐々に乾かし水分を抜く
- 素焼き:700~800度で焼く
- 下絵付け(したえつけ):素焼した器の素地に絵付けをする
- 施釉(せゆう):表面をガラス質の被膜(ひまく)で覆う
- 本焼(ほんやき):高温で何時間もかけて焼き上げる
- 上絵付(うわえつけ):本焼後に素地の上にさらに絵模様を施す
- 低温焼付(ていおんやきつけ):上絵付した器を700~800度で焼く
- 窯出し:窯の中が十分に冷めてから取り出す
日本にたくさんある「やきもの」の特徴は工程での工夫であったり、どのような技術を使っているかであったりで生まれるのです。
「やきもの」の手法をいくつかご紹介します。
下絵付の手法
染付(そめつけ) | 酸化コバルトを主成分とする呉須(ごす)で下絵付をし、透明柚をかけて焼くとできる藍一色の絵模様 |
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鉄絵(てつえ) | 酸化鉄を主成分とする鉄砂(てっしゃ)で下絵付をし、長石柚や藁灰柚(わらばいゆう)で焼くとできる茶色、こげ茶色、黒褐色に発色したもの |
辰砂(しんしゃ) | 酸化銅を含んだ釉薬で還元炎焼成をし、紅に発色させたもの |
上絵付の手法
色絵(いろえ) | 赤、青、黄、緑、紫などの色絵具で上絵付けしたもの |
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染錦(そめにしき) | 下絵付の染付と、上絵付の色絵を組み合わせたもの |
金襴手(きんらんで) | 金泥や金箔を使って文様を入れ豪華絢爛にしたもの |
やきものの表面をおおっているガラス質の被膜を釉薬(ゆうやく)・釉(うわぐすり)といい、丈夫にするだけでなく美しい装飾の役割も果たします。
釉薬(ゆうやく)の手法
灰釉(かいゆう) | 最も基本的な釉薬で天然の草木の灰を原料とし長石・珪石も混ぜている |
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鉄釉(てつゆう) | 透明釉に酸化鉄の赤い粉末を着色剤として添加したもので、分量で色が変化するのを「鉄釉七変化」という |
志野(しの) | 長石釉(白釉)を掛けた日本で最初の白い陶器、白磁とは違った美しさをもつ |
織部(おりべ) | 美濃焼から生まれた手法で、主に緑釉を使いながら長石釉・灰釉・鉄釉も加える |
白磁 | 白い素地に不純物の少ない透明釉を掛けて還元炎焼成をすることで生まれる真っ白な仕上がり |
青磁 | 鉄分を含む本灰や長石を調合した釉薬を掛けて還元炎焼成し、青から緑系までの変化を持つ手法 |
陶器と磁器の違い
一般的に「やきもの」とよばれるものは「陶磁器」を指し、大きく分けると「陶器」と「磁器」があります。
「陶器」は「土もの」、「磁器」は「石もの」ともいわれるように、何に違いがあるのかというとズバリ「主原料」です。
- 陶器(土もの):主原料は陶土とよばれる粘土(地面を掘るとでる粘土層)
- 磁器(石もの):主原料は陶石とよばれる岩石(長石や珪石などを多く含む)
原料が違うことから、「陶器」と「磁器」とではそれぞれ特徴があります。
項目 | 陶器 | 磁器 |
主原料 | 粘土 | 岩石 |
焼成温度 | 1100~1300度 | 1300~1400度 |
打音 | 鈍くて低い音 | 金属的で澄んだ高い音 |
透光性 | あり | なし |
吸水性 | あり | なし |
手ざわり | ざらついている | なめらか |
他には「もろくて壊れやすい土器」や、「陶器と土器の中間である炻器(せっき)」というものがあり、主原料を粘土とすることから広義的には「陶器」とされています。
炻器の特徴
- 主原料:粘土
- 焼成温度:1200~1300度
- 打音:金属音
- 透光性:なし
- 吸水性:なし
- やきもの例:備前焼、信楽焼など
陶器にあるのは素朴さや温かみ、磁器にあるのは美しさや実用性。
どちらが良いということはなく、それぞれの特徴に合わせて使っていくことをおすすめします。
日本全国の陶器について知りたい方は、【東北・関東・中部】【北陸・関西・中国】【四国・九州】とわけて解説していますのでぜひご覧ください。
漆器の製造工程や違い
木や紙などに漆(うるし)を塗り重ねて作るものを「漆器」といい、日常品から高級品まで色んな使われ方をしています。
漆とは日本や中国、東南アジアなどにある落葉高木で、木に傷をつけると出る乳白色の樹液のことです。
英語では陶磁器を「チャイナ」、漆器を「ジャパン」といわれていて、日本のナショナルブランドといえるでしょう。
漆器の製造工程
- 木地
- 下地塗り
- 中塗り・上塗り
- 加飾
上記の流れは基本的な製造工程で、産地ごとでも違いがあるので旅の楽しみの一つですね。
製造工程の他に「器体」や「塗料」によっても違いがあります。
器体の種類
- 天然木:天然木を使用したもの
- 木の粉入り・木乾:合成樹脂に木の粉を混ぜて成型したもの
- プラスチック:合成樹脂だけで成型したもの
天然木で作られた漆器は熱いお汁を入れても人肌で熱くなく、漆の塗りも良いことから年が経っても丈夫ではがれにくいといったのが特徴です。
塗料の種類
- 漆:天然樹脂塗料で漆の木の樹液が主成分
- 合成樹脂塗料:ウレタンなどで作られた塗料
- カシュ―:カシュ―㈱が発明した、主原料をカシュ―とする合成樹脂塗料
カシュ―を含めた合成塗料は漆器に大切な「しっとり感」や「ふっくら感」がない一方で、紫外線・熱・アルコールに強くて塗るのも簡単といったような良いところもあります。
漆に比べて合成樹脂塗料は値段もグッと安くなるので、ご自身のこだわりと相談をしながら選んでいくといいでしょう。
おわりに
- 国で指定される「伝統的工芸品」は235品目で「陶磁器」「漆器」「織物」「木・木工品」「和紙」「人形・こけし」など
- 陶磁器(やきもの)は土・石を形作り焼いたもので原料や手法から特徴づけられる
- 漆器は木・紙に漆を塗り重ねたもので器体や塗料で違いがある
そもそも「伝統的工芸品とは?」「陶磁器・漆器とは?」という基本的なところから調べていきました。
これからは伝統工芸品のことや、「〇〇焼」「〇〇塗」といった個別の内容に触れていきたいので、時間があるときにでも見て頂けたらと思います。