鳥取で催されるイベントの手伝いをするべく、夜行バスで千葉から大阪、青春18切符で大阪から鳥取に向かう途中。
乗り継ぎがうまくいかず、鳥取県智頭町にて3時間ほど待ちぼうけに。
(これぞ、ローカル線の醍醐味!)
前々から「森林セラピー」や「森のようちえん」など気になっていたので、観光案内所へ聞きに行くと、運がいいことにガイドをしてもらえることになりました。
この道20年、ベテランガイドさんの案内を少しだけ紹介させてもらいます。
タレントに愛された監督が遺したもの
まず案内されたのは、古い洋風の建物「西河克己映画記念館」。
西河克己さんは智頭町出身の映画監督で、代表作には「青い山脈」「伊豆の踊子」「潮騒」などがあります。
小さな洋館の中にいくつものポスターが貼られていることに加えて、驚くのは吉永小百合さんや山口百恵さん直筆のお手紙などが置いてあることです。
実は吉永小百合さんや山口百恵さんが10代〜20歳頃に、西河克己さんが監督する映画作品で育て上げられた後、日本を代表する女優になったいったとのこと。
今でも命日になると追悼のお手紙と記念品が届いているそうで、最近のお手紙も見させてもらうと字の美しさに言葉を失いました。
字にも品格が溢れていて、お二人の代表作を見てみたいと思います。
他には舟木一夫さんや三浦友和さんらが出演する映画ポスターも飾られ、マニアックなファンが何度も訪れいるそうです。
江戸・明治・大正・昭和が誇る近代様式が詰め込まれた「石谷家住宅」
歩き始めてまずガイドさんから言われたのは、「石谷家住宅を見るのは1時間以上かかるからなあ…」と。
今まで「〇〇家」と名がつくものをいくつも見てきましたが、あまり深くまで見れなかった私なので、「そんなにかかるの…?」というのが正直なところでした。
しかし案内してもらうとガイドさんの言う通りなのに加えて、重要文化財の楽しみ方も知ることができます。
大工さんたちの技術を駆使した粋な造り
「石谷家住宅の魅力は?」と聞かれたら、いの一番にいいたいのは「技術を駆使した粋な造り」です。
石谷家住宅
家主の石谷家は広く地主・山林経営をしてきた家で、江戸時代の参勤交代で賑わう智頭宿で「塩屋」として繁盛した。
石谷家住宅は家の繁栄を示す大規模な木造家屋で、敷地3000坪部屋数40余りと7棟の暮らし土倉を持つ邸宅。
おそらく1分ごとにガイドさんの説明が3分入り、感動しながら中々前には進めない。
「石谷家住宅の全てを伝えるには、少なくとも6回は来ないと」なんてことをいうもんだから、自分でも考え込んでしまい進めない。
例えば「二重戸」。
客間に入ってきたお客様が間違って戸を開けても、仏間が見えないようにという配慮。
お次は「雪見障子」。
普通なら下にあるはずの雪見だけれど、見るなら上の景色だろうと中部に造られる。
唸ったのは「客用のお風呂」。
なんの変哲もないようだけれど、上を見上げると凝った細工が。
一般向けに公開していないトイレも、同じような造りになってるそうです。
1人の空間でほっと一息して上を見上げたとき、息を呑むほど美しい天井に感動する客人の姿が目に浮かんできます。
他にも分かる人には分かる、大工さんの技術を注ぎ込んだ写真を紹介。
もし気になる人は、さあ智頭町に行きましょう!
全国の木を贅沢に利用
「見てごらん。栗の柱だよ。もう今は、こんな大きな木はとれない。」
石谷家は江戸時代から続く名家で、山林経営もしていることから全国に山を持っていました。
そのため石谷家住宅では全国の木をふんだんに使い、技術だけでなく素材にも注目です。
中へ進んでいくと、ガイドさんから「この木、なんの木?」と質問。
考える間もなく、「桜とけやき」と回答されます。
…ちょっとくらい考えさせてくれても…まあ、わからないけど。
あとは天井に「奈良の春日杉」と、床に「屋久杉」。
ぜ、ぜいたくです…
そして最後に、石谷家住宅の中で一番高いだろうといわれる「柿の木」。
一体いくらするんでしょうか…
お金だけでなく全国に資材を持っているからこそ建てられ、しかも山奥にひっそりとある。
そんなのにひょっこり出会える、だから旅は面白い。
さいごに
最初にガイドさんから「智頭町にくるリピーターには最多で13回の人がいる」と聞いたときは、「…え!なんで!?」と表情の100倍くらい心の中で驚いてました。
しかし3時間過ぎてみると、6回くらいは来たいかなっているのが不思議なところです。
それは智頭町の歴史や風景が魅力的なのは言うまでもありませんが、加えてガイドさんの存在が大きいのだと思いました。
ガイドさんの言葉を思い出すと…
「全部教えちゃうと、次来る楽しみが…ね?」
「ね?」ってなんだよ、気になるじゃんか!
…その場所をよく知る人に案内をしてもらい、その人を通じて地域とつながっていく。
一つのあり方としては、いいんじゃないかなと思えた智頭町の旅でした。